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羽ばたく鳥の空 |
真っ白い鳥は羽ばたいた。
振り返る、振り返る。 どんどん小さくなる街。振り返る。
羽ばたくのをやめる。すると地面に真っ逆さま。
あわてて羽ばたく。 そしてもう一度振り返る。 街はまだ見える。
羽ばたくことはやめられない。 どんどん遠ざかる街。
そこで意識がなくなった。
気づくと大きな川に浮かんでいた。 ゆらゆらと流される。 その心地よさに鳥は目を閉じる。
そして目を開ける。 真っ青な空、真っ白い雲。
鳥は羽ばたいた。 真っ白い雲になるために。
羽ばたく、羽ばたく。 そして振り返る。
街はもう見えない。 鳥は一粒、涙を流した。 そして振り返ることなく羽ばたき続けた。 やがて鳥は真っ白い雲の中へと姿を消した。
真っ白い鳥はそのまま真っ白い雲になった。
風に流され世界を旅する雲。 かつての街の上も通り過ぎる。 でも雲になった鳥にはもう地面に降りることはかなわない。 そして風の導くままに次の街へ向けて。
雲の涙は雨となって世界へ降り注いだ。
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